家族法を専門にやっているわけじゃないけれど。

代理出産向井亜紀さん夫妻が会見 日本国籍取得を断念
http://www.asahi.com/national/update/0411/TKY200704110293.html
 タレントの向井亜紀さん(42)が11日、米国人に代理出産してもらった双子の男児(3)との法律上の親子関係を認めなかった3月の最高裁決定の後、初めて記者会見をした。決定について「正直がっかり」と悔しさをにじませた。男児らの出生届を出すことを断念し、日本国籍は取得せずに米国籍のまま育てていくことを明らかにした。
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 最高裁決定後、東京法務局から「2週間以内に男児の出生届を出さないと、今後日本国籍を与える機会はない」との連絡があり、11日が期限とされたという。
 しかし、向井さん側は出生届を出さなかった。法務局が、届け出の父親欄に高田さん、母親欄に代理出産した米国人女性を記入するよう指示してきたからだ。
 指示に従って「母親」とすれば、訴えられる可能性がある。代理出産契約で、米国人女性には男児の親としての権利義務を一切負わせないよう取り決めているためだ。
 また、最高裁決定の補足意見で、法的な親子関係を成立させるための選択肢として勧められた「特別養子縁組」をするには、子の「実の親」の同意が原則必要になり、やはり契約が壁となる。「高いハードルを感じている」と嘆いた。
 男児は米国人として外国人登録し、この春から幼稚園に通い始めている。このため、具体的には、特別養子縁組のうち外国人を養子とする「国際特別養子縁組」が考えられる。この場合、米国法上は実の親の向井さん夫妻が「同意者」になり、同時に申請者にもなるという不自然な形をとって申し立てることを余儀なくされる。
 「最高裁特別養子縁組を認める余地はあると言った以上、申し立ては通るのではないか」とみる裁判官もいるが、家裁が認めるかどうかは、申し立ててみないとわからない。
 補足意見について、向井さんは「調べてみると、大雑把な提言だった」と落胆を隠さない。特別養子縁組の期限は、向井さんの場合、双子の男児が8歳になるまでだ。
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以前、このエントリで書いたように、現在のところは、代理懐胎を認めることには慎重であるべき、という立場なのですが、それとは全く別に気なった点が、なぜ、特別養子制度の申請についてのみ、出産した女性の名前を使うという形で代理出産契約をアレンジしておかなかったのだろうか、と言う点です。普通養子制度と異なり、特別養子制度は、「実方の血族」と「子」の法律上の関係を断ち切ることになります(民法817条の2第1項)。そして、特別養子の離縁は、養親による虐待などがあり、かつ実父母による相当の監護が可能な場合にのみ認められることになっています(民法817条の2第1項及び第2項)。いってみれば、男児の親としての権利義務を一切負わせないための制度ということもできるので、このような日本における現行の特別養子制度の効力を適切に説明すれば、この米国人女性も、特別養子制度の申請についてのみ自らが実親として名前を記載されるという条項をいれることを拒否しなかったのではないか、と思うわけです。でも、まあ、どんな状況でも自らの名前が使われるのはいやだったのかなぁ、とか、そもそもネバタ州の法律で、そんな例外すら認めないようになっているのかぁ、とおもいつつ、もう一度記事を読んでみたら、「補足意見について、向井さんは『調べてみると、大雑把な提言だった』と落胆を隠さない。」と書いてありまして。本当にこのような発言をしたのであれば、完全なる憶測なのですが、判決が出てから特別養子制度についてはじめて調べた、ということになりゃしませんか。これから生まれるであろう子供が居住の本拠とするであろう日本における現行法上どのような法的地位を得るのか、そして得る可能性があるのか、ということについて調べることなく、自らの望み通りの遺伝的につながりのある子を手に入れるために代理出産を実行したのでは、という疑念が出てきてしまいました。でも、さすがにそんなことはないだろうなぁ。。。