何が勝ちで何が負けなのか

「薬害C型肝炎九州訴訟に国控訴」のニュースを聞いて、「国の訴訟体制強化へ、相次ぐ敗訴で専門スタッフ増員」と言う新聞報道を思い出した。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060827it01.htm

国の訴訟体制強化へ、相次ぐ敗訴で専門スタッフ増員
 政府は2007年度から、国が被告となる裁判に対応する体制の強化に乗り出す。
 今年に入って、薬害C型肝炎原爆症認定訴訟など、国の政策判断などが問われる裁判で、国の敗訴が相次いでいるためだ。
 裁判に臨むスタッフの質量不足も敗訴増加の一因と見て、法務省の専門職員増加、外部の人材活用などに積極的に取り組む考えだ。
 国が被告となる裁判は、法務省が一元的に対応している。検事や裁判官出身の訟務検事などが、国側代理人として訴訟活動をしている。国を訴える裁判は近年増える傾向にあり、04年は8424件に上った。
 薬害などの集団訴訟では、原告弁護団が100人規模になることもある。しかし、法務省訟務部門の訟務検事などの法曹資格者は50人前後で、一つの裁判に数人しか担当者をつけられないのが現状だ。民間弁護士に弁護を依頼する場合もあるが、報酬額が低いために依頼できないケースもあるという。
 このため、法務省では、〈1〉訟務部門で重大裁判を統括している参事官(法曹資格者)を3人から5人体制とする〈2〉約340人いる法務専門職員も10人程度増やす〈3〉民間弁護士に訴訟弁護を依頼する場合に支払っている報酬予算額を倍増させる――などの対策を進める意向だ。他省庁との人事交流を拡大することや、民間弁護士を期限付きで国家公務員に登用することも検討している。
 さらに、大学教授などから準備書面作成などの支援を受けるため、「アドバイザー雇用」「調査研究委託」などの制度も創設したいとしている。
2006年8月27日3時0分 読売新聞

予算獲得の方便なんだとは思うけれど、国民と国の関係における国の存立理由ということを考えれば、行政の責任を問う大規模訴訟の場合に「なにがなんでも勝訴じゃなきゃダメ」というのはおかしいよなぁ、と。
例えば薬害の場合には、同じく税金を使うなら、被害回復のための具体的な対策とか、訴訟の場でないところでの失敗学的なアプローチによる検証と不必要な失敗を繰り返さないシステム作りなどに使われるべきだと思うわけです。前も書いた気がするけれど、とりわけこの種の訴訟は原告にとってのみ給料なり報酬の出る仕事じゃない、しかも時間はどんどんすぎて原告は年を重ねていく、そのくせ税金はがっつり取られる(あるいは取られてた、あるいはそのうち取られることになる(はずだった))という状況にあるわけだから。
こんなこと誰でもぱっと思いつくと思うんだけれど、そうなっていないっていうところに問題の根深さがあるんだろうなとも。