映画もみてみたい。

博士の愛した数式

博士の愛した数式

実家で睡眠と睡眠のわずかな隙間に読んだ本。これまたハードカバーで買っておいて読めないでいるうちに文庫本が出てしまったというところに悲しみが。
しかし読後はすっきり。こんな風にやわらかいイメージをそのままやわらかく文章として表現できるというのは本当にうらやましい。文章の中に、ちょうど心地よくなるぐらいの遊びの部分がある感じ。論文でこんな遊びの部分を作ることは御法度なんだろうけれど。
話の筋とまったく関係なく読んでうれしくなったのが次の文章。

 数学のひらめきも、最初から頭に数式が浮かぶ訳ではない。まず飛び込んでくるのは、数学的なイメージだ。輪郭は抽象的でも、手触りは明確に感じ取れるイメージなんだ。それと似ているかもしれないね。
106頁

自分が書いた/書いている論文で表現しようとした/しているイメージは、まさにこういうイメージ。言葉をつかってつくったわけじゃなく、かといって形で表現することもできないけれども、自分でははっきりと感じているイメージ。「こんなやり方で研究を進めるのもあり」といわれた気がしてうれしかった*1
ただ、そのイメージそのままでは、それがまともなものかどうか検証できないというところが痛いところで。時間を費やして論文にしてみて、結局だめなイメージでした、なんて可能性が非常に高いことはちゃんと自覚しています。自分のなかにでてきちゃったものなんだからだめでもしょうがないよ、と思ってあきらめるしかないんだよなぁ。

*1:ほんとは「なし」なのかもしれないけれど。