年頭ぐらいはまじめに。

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20060104AT1E0300603012006.html

 法務省民法の柱の1つである「債権法」の抜本的な見直しに着手する。IT(情報技術)や国際化の進展で多様化する契約形態を法律で明確に位置付ける。時効のあり方なども含めて見直す方針で、2009年の法案提出を目指す。1896年の法律制定から100年以上が経過し、現代社会に対応できていない面が多いと判断した。
 杉浦正健法相が省内に設置を指示した「民法改正委員会」(座長・内田貴東大教授)が検討を進める。
 債権法は「融資した金を返せ」など相手に一定の行為を要求できる権利を定めた民法条文の総称。「債権」は通常、売買や賃貸借などの契約によって生まれるが、最近はネット取引やフランチャイズチェーン(FC)契約、ライセンス契約、ファクタリング(債権買い取り)など債権法が想定していなかった取引や契約形態が増えている。

この記事を見たときの最初の感想が、「とりあえず2009年までは債権総論/各論の講義を担当したくないなぁ。。。」という不埒千万なものであっただけに、エントリを立てるというのもためらわれたのですが、覚書程度ということで。
で、この記事を読むと、債権法といっても不法行為法は外れて、しかも契約各論で何となく典型契約類型を増やすぐらいの改正のようにも読めるけれども、「債権法」の「抜本的な見直し」といっている以上、そんな感じの議論じゃ収まらないんじゃないかなぁ、というのが二つ目の感想。
例えば、へなちょこな私がぱっと思いつく抽象的理論の話だけでも、債権総論の話として、解除・損害賠償・担保責任などなどの債務不履行責任の話も出てくるのだろうし、債権譲渡の話も一ネタになるのだろうし。契約の話としても、意思主義に基づいた近代的契約法の枠組に加えて別の枠組も採用するのか否か*1、近代的契約法の枠組でも合意って何よという話が出てくるのだろうし、典型契約類型(そしてそこに規定される任意規定)にいかなる意義をもたせるのか、約款論の取り扱い、民法上の「人」のなかで消費者・労働者といった類型を立てるのかどうか、継続的契約をどのように捉えるのか、公序ってなに、などなど*2。こんな風に、ある程度長い期間維持されることを想定して「債権・債務とは何か」「契約とは何か」というレベルの理論的基礎*3をある程度固めたうえで、現在ある典型契約や、ネット取引、フランチャイズ契約などなどの新しい取引などについての具体的な規律の話が組み立てられていくということになるのじゃないかな、と。
そんな風に考えていると「偉星人のみなさまが集って雲の上でものすごい話が展開されるのだろうなぁ」と思えてきて、フォローしきれるかがかなり不安になってしまい。。。年頭らしく「勉強しよう」と思いつつ、人間らしく「もう少しあとで」と思いつつ*4

*1:内田貴先生が座長ということだし。

*2:契約法を契約対象にしている人はもっとすらすら出てくるのだろうけれど。。。

*3:へたすりゃ「民法ってなに」っていう話にも、、、というのは無理があるか。。。

*4:具体的には「まずは、判例タイムズで連載中の座談会をもう一度読みなおすところからスタートしよう、でもとりあえず講義期間(&試験)が終ってからかなぁ。」というところで。