読まれてないならハードルすら存在しない。

そして二人だけになった―Until Death Do Us Part (新潮文庫)
この本は、帰省中の時間を使って読もうと思って買ったけれどもその時間寝つぶしてしまって、その後そのまま読めなかったというもの。二年ぐらい放置していたかな。感想は「う〜ん」というもの。面白くないわけじゃないんだけれども、物足りない感が。森博嗣を知ったのは「すべてはFになる」(といっても文庫本になってから)。衝撃を受けた。そして、ここからの10冊は一気に買って一気に読んでしまった。推理小説としてももちろん面白かったのだけれども、キャラクターの個性、研究者としての感性、そして心の動き方の描写に十二分の満足を得られて、読了後しばらく呆けた状態になった。他の本ももちろんおもしろかったのだけれども、特に「有限と微小のパン」は印象に残っている。
というのも、「有限と微小のパン」の最後に出てくるパン屑が、その本限りの流れのなかでのリアルな世界とバーチャルな世界の対比の象徴という意味だけじゃなくて、「すべてはFになる」では自分の存在すらも完璧に消して無機質に研究室を出て行った博士が、最後には物理的痕跡、しかも日常的で生活感あふれるパン屑なんてものを残して部屋を立ち去った(それも男連れでだった気が)なんてところの対比(しかもこれが意味することはかなり深いものがある気がする)も導いているんじゃないかと感じたから(と勝手に思っているだけかもしれないのだが)。終わらせ方というのはどんな事柄に関してもとても難しいものだと思うけれど、このシリーズはすっと幕が引かれた感じを受けてそれもとても満足だった。しかし、さすがに記憶が曖昧になっているなぁ。内容を間違って記憶しているかもしれない。ほんとに「有限と微小のパン」はそんな話だったかなぁ。実家に帰ったときに、もう一度全部読み直してみよう。とにかく森博嗣を読むときは、ハードルが高くなりすぎるってことで。