最相葉月『あのころの未来 星新一の予言』

あのころの未来―星新一の預言
この本を、一段落ついてから最初に読む本と決めていた*1
最相葉月の文章のリズムが読んでいてとても心地よい*2。また、読んでいて、つばをとばして腕を振り上げ主張しているなぁ、というのではなく、静かにすっと真ん中を指差している、というように感じられるところも好き。そして、星新一も好きだった。中学校のころだったかな、図書館に行って読んでたのは。でも、この本のあとがきに書いてあるのと同じように、どんな内容だかは憶えていなかった。

で、読後。おもしろかった、としか表現できない自分の表現力の乏しさが恨めしい。

いまこれほど星の物語が響くのは、当時すでに現代の問題につながる芽があったからであり、三十年経っても古びないのは、それが真の警告だったからではないかと思うのである(90頁)。

そんな芽を書き残した星新一もすごいけれど、その芽を現代の問題のなかで花開かせることができた最相葉月もすごい。

どの話も、というのはいいすぎだけれども、それでもこの中の多くの話を法律の世界におきなおして考えることもできると思う。でも、多分この本から自分が得られるものはそこにはない気がする。うまくいえないけれど。

もう一つ。ダイアリをはじめたせいか、「どこか文章を抜き取って」という不埒な思いもあった。けれども、それを許してくれなかった。どの文章も、それを単体で抜き出して意味を取ることができる(と思う)。けれども、その文章が全体の流れの中に置かれたとき、その意味はその流れに沿ったものとして少し形をかえる(気がする)。さらにその文章自体が、より深く感じさせる力をもつものとなる(ように感じた)*3。こんなふうにトリミングを許さないような文章を書いているのかなぁ、おれは。自分の論文を読み返す勇気はない。けれども校正の時にはいやでも読まなきゃならない。むぅ、この本を読んでよかったのかどうか。。。

*1:8月に文庫本が出たとはしらなんだ。買うのが早すぎたか、、、

*2:知らなかったけれども、法学部法律学科出身とのこと。関係あるかなぁ。

*3:上の引用文もまた、本文のなかにおけば、また違う役割を果たしていると思う。